進化し続ける“木工のまち・鹿沼”の伝統と技術の結晶「組子細工」
釘を使わずに組みつける、日本独自の木工技術「組子」。鹿沼には、この「鹿沼組子」の技術があります。「豊田木工所」の3代目・豊田晧平さんは、鹿沼組子を“受け継ぐ”だけでなく“広く伝える”伝統工芸品として、その先の未来に思いを馳せています。
豊田晧平さん/(有)豊田木工所代表
「鹿沼組子」100分の1の世界を追いかけて―
「組子自体は日本各地でも作られていますが、技術業として独立した存在である組子職人の手によって製作されているのは、全国でも鹿沼ぐらいだと思います。現在は新しい機械を導入し、大きな建具も以前に比べ、時間をかけずに生産できるようになりましたが、手作業が基本であることに、変わりはありません。職人たちは今も、100分の1の世界を追いかけて、ひとつの作品を完成させます。鹿沼組子は、寸分の狂いも許されない職人技術の繊細な完成美も魅力。世界からも注目を浴びている、鹿沼が誇る伝統工芸品なんです。」
江戸時代から今に伝わる、
鹿沼が誇る伝統工芸品「鹿沼組子」
日光東照宮修営に携わった職人たちが鹿沼宿に移り住み、その卓越した技術がこの地に根付いたことにより、優れた木材・木工製品の産地として全国に名を馳せることになった鹿沼。鹿沼組子は、そんな“木工のまち”を象徴する木工技術の結晶。釘や金具などは一切使わず、角度を付けた数多くの部品に切り込みを入れ、手作業で組み込んでいきます。その正確な組み込みは、熟練した組子職人だけが成せる貴重な伝統技術。鹿沼組子の施された製品は「栃木県伝統工芸品」に、鹿沼市からは「かぬまブランド」に認定されています。
鹿沼組子の原点として古くから受け継がれた「麻の葉模様」
麻の生産量が日本一の鹿沼。神聖な植物として古来より邪気を払い、運気をあげると言い伝えられてきた麻は“野州麻”として、全国に出荷されています。組子細工の模様のなかでも 「麻の葉模様」は、代表的な柄。ほかにも胡麻、七宝、皐月、龍胆など200種類以上の模様があり、それぞれの模様を組み合わせることで、美しく複雑な幾何学模様が無数に生み出されます。
時代と共に暮らしに寄り添う
自由で新しいスタイルの伝統工芸
鹿沼組子は、伝統を守りながらも、新しい可能性を求め時代と共に進化を遂げています。ロングトレーやコースター、スマホスタンドやお守りなど、巧みな職人技術を活かしながら、デザイン性と機能性を兼ね揃えたアイテムが、次々に誕生。これまで和室を飾る最高の贅沢品とされてきた鹿沼組子が、食やインテリアなどさまざまな日常のシーンで自由な使い方を楽しめる、私たちの暮らしに寄り添う身近な伝統工芸品になっていきました。鹿沼組子に込められた職人たちの想い、手仕事のぬくもりは、時を越え次の世代にもきっとつながっていくでしょう。